センター長挨拶

   九州工業大学 大屋勝敬教授

 北九州市には,工学系の学部・研究院を有する3大学(九州工業大学,北九州市立大学,早稲田大学大学院)が隣接しいています.3大学には,自動運転車を開発するために必要な技術(例えば,画像計測やミリ波計測などの各種計測技術,計測情報を用いた各種認識・判断技術,車両走行制御技術等)を持つ数多くの研究者が在籍されています.北九州市におけるこの地理的優位性を利用し,そして,数多くの研究者の英知を結集することにより,新たな自動運転・安全運転支援技術が開発できます.この技術を応用することにより,安全・安心な車社会システム実現に貢献していきたいと考えています.

設立趣旨

 近代社会システムにおいて、移動手段・輸送手段としての自動車の役割は重要不可欠となっています。 そして、車社会の発展により、私たちは多くの利益を享受してきました。
 しかし、依然として交通事故“零”の目標は達成されないままであります。
 また、健常者だけでなく、非健常者や今後増加が予想される高齢者に対する安全操縦支援法が十分に開発されているとは言い難い状況でもあります。

 近年、交通事故の減少等を目指し、全世界の車業界が自動運転車の開発に凌ぎを削っています。自動運転技術には、自動車の自動走行技術だけでなく安全運転支援が不可欠です。この安全運転支援を行うには、自動環境認識技術や自動状況判断技術が必要となります。
 しかし、これらの技術には、今後解決しなければならない問題が数多く残っています。
 さらに、非健常者や今後増加が予想される高齢者に対する安全操縦支援法の開発も急務です。

 北九州市には、工学系の学部・研究院を有する3大学(九州工業大学,北九州市立大学,早稲田大学大学院)が隣接しいています。
 3大学には、上記問題の解決に寄与できる技術(例えば,画像計測やミリ波計測などの各種計測技術、計測情報を用いた走行経路自動生成や追い越し判断技術等の各種認識・判断技術,車両走行制御技術等)を持つ数多くの研究者が在籍しています。
 この人数は大都市圏における同様な研究者の人数に匹敵します。
 北九州市におけるこの地理的優位性を利用し、そして、数多くの研究者の英知を結集することにより、新たな自動運転・安全運転支援技術が開発できるものと考えられます。この技術を応用することにより 車社会における長年の夢である交通事故“零”の実現が期待されます。さらに、開発される技術を地域社会システムに融合させることにより、安全・安心な地域社会システム実現にも大きく貢献できるものと考え、本総合研究センターを設立しました。

 本研究センターは平成26年 5月 1日開設しました。

目  標

 本研究センターでは、人工知能を持つ完全自動運転車両の開発を目指します。
 全ての車が自動化されれば、車社会における長年の夢であった交通事故“零”の実現も可能となるであろうと考えます。さらに、この技術を応用することにより、高齢者・要介護者そして健常者にとって安心して住みやすい地域社会システム構築への貢献が可能となります。
 この考えの下、最終的には、車社会と地域社会とが融合した安全・安心車社会システムの構築を目指します。
 完全自動運転車両が開発されれば、全ての自動運転車両を、管理センター等を介して制御することが可能となります。このことにより、地域社会の安全・安心を飛躍的に改善可能なシステムの構築が期待できます。

 例えば、以下に示すシステムなどが考えられます。
○交通事故の減少
 人間などの飛び出しによる事故を未然に防ぐシステム
○省エネルギー・省スペース化
 電力スマートグリッドを利用した車両の省エネルギー化システム
 高速道路における短い車間距離による隊列走行システム
 自動運転車両の共有化による省駐車スペースシステム
○高齢者・要介護者のアシストシステム
 介護を要するお宅への自動食事搬送システム
 高齢者・要介護者の目的地(例えば,リハビリ施設等)への自動搬送システム
 車両内での自動健康診断システム
○緊急時・災害時のアシストシステム
 救急車,消防車やその他緊急車両の目的地への最短時間走行システム
 大規模災害時の避難場所への住民自動搬送システム
○その他
 自動運転車両を利用した観光システムの構築  生鮮食料品等の最速輸送システムの構築

技術開発計画

下記の手順にて技術開発を行う予定です。

① 要素技術の開発
○計測技術
 身体情報計測、路面状況計測、周辺車両計測、周辺障害物計測、 車-車間情報通信技術、路-車間、情報通信技術等
○認識・判断技術
 人間の意志認識,路面状況認識,周辺車両認識,障害物認識,危険認識, 車両動作判断等
○車両の自動操縦技術
 自動目標車線生成技術,車両動作判断に基づいた自動走行制御, 路面状況認識に基づいた操縦アシスト技術,周辺車両認識・危険認識に 基づいた操縦アシスト技術等

② 運転支援技術の開発と車両の開発
 開発された要素技術を基に、操縦者の操縦サポートを行う半自動運転車両の開発を 目指します。例えば、操縦者への早期危険情報伝達システムや路面状況伝達システム、身体計測を利用した健康管理システムなどです。
 これらのシステムを用いることにより、操縦者のミスに起因する交通事故の軽減に貢献できます。
 さらに、個々の高齢者・非健常者に適合する個別アシストシステムの構築も可能となります。

③ 人工知能を持つ完全自動運転車両の開発
 これまでに開発される技術を基に、人工知能を持つ自動運転車両を開発します。

④ 安心・安全車社会システムの構築
 これまでに開発される技術を基に、車社会と地域社会とが融合した安全・安心車社会システムの構築を目指します。